midi という言葉がインターネット上でメジャーな言葉だった頃、今とは違う文化がそこにはありました。ゲーム音楽のアレンジもその一つです。
midi とは簡単に言えば音楽の演奏データが収められているファイルです。ファイルサイズも100KB以下という軽さで、インターネットの速度が今よりずっと遅かったダイヤルアップ接続や ISDN などが主流だった頃は音楽ファイルといえば midi でした。現在では mp3 などが主流ですが、midi は mp3 のような生演奏の音や生楽器の音に近いような音は出せません。再生音は再生する人の環境依存となるので環境によって音が変わってしまう事がありました。
閑話休題、ゲーム音楽をアレンジする文化というものがいつから誕生したのかはわかりませんが、2001年には「爆裂midiコンテスト」というアレンジ曲のイベントが開催されました。少なくともそれ以前から行われていた事は確かです。
私が実際にゲーム音楽のアレンジ文化に触れたり実際にやってみたりしたのは2003年頃でした。その頃には既に多数の方がゲーム音楽のアレンジを行っていました。当時は Youtube やニコニコ動画というような動画サイトはありませんでしたので個々に個人サイトを持ち、そこで公開するのが主流でした。人気だったのは FINAL FANTASY などをはじめとするスクウェア・エニックス系のゲーム音楽アレンジです。いかに多くのアレンジ曲を作ってサイトに公開するかという事を競う背景もありました。
ゲーム音楽のアレンジは何故廃れたのか
ゲーム音楽のアレンジも近年では見る事も少なくなりました。現在でも国内海外含め制作されていないわけではありませんが、話題性という意味では大幅に縮小してしまった文化と言えるでしょう。
作り尽くされてしまった
アレンジされるような人気のゲーム音楽には数に限りがあります。その楽曲群に数多くの人が自分流のアレンジを行って公開。次第にアレンジされ尽くした曲を新たに作っても注目度も少なく意味がないと思われ作られなくなった事も考えられます。
ゲーム音楽が進化した
ゲーム音楽のアレンジが最盛期だった2000年頃は PLAYSTATION2 が発売された頃です。その頃はまだゲーム音楽に生音が使われる事は少なく、アレンジする事によって大幅に曲風を変える事が可能でした。しかし、次第にゲーム音楽も進化して生楽器で生演奏のゲーム音楽も登場するようになりました。そうなる事で耳コピ(耳で採譜する)も高難度化し、ゲーム音楽のアレンジを制作する人が減った事も考えられます。
ゲームをする人が減った
ゲーム音楽としても人気だった FINAL FANTASY シリーズは最盛期で369万本を売り上げていました。つまりそれだけゲームをプレイした人がいるのです。人が多い分だけゲーム音楽のアレンジ曲を求める人も多いです。
しかし近年ではよく売れて30万本、ほとんどが10万本以下。ビッグタイトルの FINAL FANTASY13 でも193万本です。プレイした人が少ないゲームの音楽をアレンジしても、求める人も少ないです。次第に自己満足の世界に入ってきます。そりゃ廃れますわ。
ゲームをする人が減り、ゲーム音楽のアレンジを求める人も減った。という事です。
おわりに
やはりそのコンテンツを求める人が少なくなれば、廃れていくのは必然。ゲーム音楽アレンジ曲然り、ボーカロイド曲然り。ゲーム音楽のアレンジに触れてきた身としては悲しいものではありますが、時代の流れには抗えません。