音楽

concaを使って実際に即売会でダウンロード頒布してわかったメリットとデメリット

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日本の商業音楽市場でも CD からダウンロード販売や定額制ストリーミング配信が拡大しており CD メディアでの販売は縮小が続いています。音楽に限らず、Adobe 関係のソフトや Office 系のソフト、その他パソコン関係のソフトもダウンロード販売が増えてきています。

そして CD メディアの市場も縮小して2015年には高品質で有名な太陽誘電の光ディスク事業撤退というニュースは同人音楽界隈でも話題になりました。同人音楽界隈では依然として CD メディアの頒布が主となっていますが、同人即売会でもダウンロード頒布を可能にするサービスがあります。それが、conca (コンカ)というサービスです。

即売会でダウンロード頒布ってどうなの?実際に使ってみなきゃわからないし、もしかしたら同人音楽界隈でも CD メディアからダウンロード頒布への時代の転換期にきているのかもしれない。と思って実際に同人音楽即売会(M3)で conca を利用してダウンロードカード頒布を行ってきました。それを通してわかったメリットやデメリット、実際の即売会などの反応を含めてレポートします。

concaのメリット

頒布側

  • 会場までCDを100枚など持っていかなくても良い
  • 場所を取らない
  • イベント開催日ギリギリまで作れる
  • 音楽以外も頒布できる

会場までCDを100枚など持っていかなくても良い

同人音楽即売会で音楽 CD を頒布する場合、100枚、200枚という数の CD を持っていかなくてはいけません。CD 100枚って結構な重量ですし持っていくのも大変です。これが conca のダウンロードカードだったら名刺ケースほどのサイズでポケットにも入りますし手軽に持っていけます。

場所を取らない

CD の場合売れ残ったら自宅で在庫の山…という経験がある方もいらっしゃると思いますが、conca のダウンロードカードだったら場所を取りません。

イベント開催日ギリギリまで作れる

CD プレスの場合全ての作業をだいたいイベント開催1ヶ月前には終わらせなくてはいけません。納期が2,3週間かかるためです。しかし、conca のダウンロードカードでしたらカードのデザインだけ作って先にカードを注文します。肝心の楽曲ファイルは後からインターネットで設定可能ですので、イベント前日まで楽曲制作に打ち込む事ができます。

音楽以外も頒布できる

conca でダウンロード頒布できるものは音楽だけではありません。CD には入らないハイレゾ音源も配信できます。動画なども入れられるので、Music Video も頒布するという事もできます。

買う側

  • 買ったらすぐにスマホで聴ける(MP3なら)
  • 何枚買っても重くない

買ったらすぐにスマホで聴ける(MP3なら)

conca のダウンロードカードは買ったその時からすぐにスマートフォンで聞く事ができます。カード裏面の QR コードを読み込みダウンロードページへ行き、シリアルコードを入力すれば完了です。ただし MP3 なら。Wave ファイルが登録されている場合はスマートフォンでは再生できないのでパソコンでダウンロードする必要があります。

何枚買っても重くない

即売会で CD をたくさん買ったらそれだけ荷物になって重くなりますが、conca のダウンロードカードなら何枚買っても数グラムなので重くなりません。

concaのデメリット

頒布側

  • CDに比べて見た目が寂しい
  • ダウンロード期限があり、売れ残ったらゴミ
  • 10曲までしか対応していない
  • 買ってもらっても買うだけでほったらかしにされる恐れ
  • 試聴スペースに置けない

CDに比べて見た目が寂しい

正直実際にダウンロードカードで頒布するにあたって一番のデメリットだと思いました。プレス CD のパッケージに比べるとダウンロードカードはただのカードなので見た目が寂しいです。プレス CD を作った時は、自分の作品が市販の商業音楽 CD と変わらぬクオリティで作れた時には大変感動しました。ダウンロードカードにそのような感動はありません。

また、CD にはブックレット、バックインレイ、帯など色々情報を書き入れるスペースがありますが、ダウンロードカードには表紙のみです。トラックリスト、歌詞、スタッフ、キャッチコピー、書けるスペースは多くありません。

サークルスペースでたくさんの CD を並べると見た目も良いですが、これが全てダウンロードカードだったら…と想像するとちょっと貧相でした。

ダウンロード期限があり、売れ残ったらゴミ

conca にはダウンロード期限があります。当然ファイルはインターネット上に置くわけですから、いつまでも置いておけば容量を圧迫して立ち行かなくなります。

conca のダウンロード期限は最大3年です。ただし、1年を越えると料金が上がるので1年がベターではないでしょうか。ダウンロード期限があるので思い切ってドカッと注文するわけにもいきません。売れる数を予測して売切れそうな数で注文する必要があります。度々即売会に参加するのであれば良いですが、1年に1回なら売れ残ったらゴミです。

10曲までしか対応していない

conca は10曲までしか対応していません。10曲以上のアルバムは作れません。

買ってもらっても買うだけでほったらかしにされる恐れ

これは実際に来て頂いた一般参加者から聞いた話ですが、ダウンロードカードは買った後に忘れてしまってほったらかしになるケースもあるようです。せっかく買ってもらっても聴かれないのは悲しいですね。

試聴スペースに置けない

M3 会場に行ってから気づいた事ですが、ダウンロードカードは試聴スペースに置けないじゃないですか。置くためには別に CD-R にでも焼いて持ってくる必要があります。更にジャケットも別に作って印刷するなどそれだけでも手間がかかります。

買う側

  • CDプレイヤーで聞けない
  • パソコンでダウンロードする作業が必要
  • スマートフォンでダウンロードも難しい作業

CDプレイヤーで聴けない

conca のダウンロードカードは当然ながら CD プレイヤーで聴けません。CD を CD プレイヤーなりカーステレオにセットして音楽を聴く、一番単純な方法です。誰でも考えずに音楽を聴けるというのは CD のメリットでもあります。

パソコンでダウンロードする作業が必要

conca のダウンロードカードを買ってもらったら後からパソコンでダウンロードする作業が必要となります。カードの裏面の専用 URL をブラウザに打ち込んでアクセス、長いシリアルコードを入力してダウンロードページを開く、音楽ファイルを一つずつダウンロードする。これは結構面倒ですよ。ただでさえパソコンを所持している人が減る現代では逆に時代にそぐわないのではないかとも思いました。

CD を買ってリッピングする作業も一緒でしょと思われるかもしれませんが、リッピングの方がまだ楽です。

スマートフォンでダウンロードも難しい作業

MP3 ならスマートフォンなどモバイル端末でもダウンロードは可能です。ただ、スマートフォンでダウンロードするのもハードルが高い作業です。パソコンのように自由な場所にダウンロードできませんし、ダウンロードしたはいいもののどこから聞くの?など全ての人が等しく出来ることではありません。

CDプレスとconcaの費用比較

ダウンロードカードの費用ってどうなの?という疑問ももちろんあると思います。ただのカードだから費用は安いんでしょう?と。しかし、ただのカードといっても名刺を印刷するような安価ではできません。

ここでは CD を100枚作った場合と conca でダウンロードカード100枚作った場合の費用を比較してみます。

CD100枚作った場合

仕様:CDプレス、ジュエルケース、ジャケット4P、帯付き、10曲入り

この仕様でプレスCDを作った場合の費用は、52,000円です。価格は底値プレス様です。

concaで100枚作った場合

仕様:カード0.3mmプラン、10曲入り、1ファイル500MBまで、ダウンロード期限1年

この仕様で conca でダウンロードカード100枚作った場合の費用は、21,254円です。

CD プレスよりも半額以下で作成できますね。参考までに他の方法の費用を書いておくと、CDコピーの場合は46,000円。手焼きの場合は12,398円です。

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実際にM3でダウンロードカードを頒布した所感

世の中は CD が売れなくなりダウンロード配信に移り変わっていますが、同人音楽界隈ではまだまだ CD が魅力的に映っていると思います。同人音楽のリスナーさんの中にも、CD が欲しいという人と CD 不要でダウンロードで音楽だけ欲しいという二通りの人がいらっしゃると思います。つまりダウンロードカードを頒布すると CD が欲しいという人を自ら拒んでいる事になります。自ら自分の作品の販売の間口を狭めている印象は否めませんでした。どちらもカバーするために CD もダウンロードカードも両方頒布すれば良いですが、それではコストがかさんで現実的ではありません。

今回ダウンロードカードで新しい作品を頒布しましたが、私のサークルをチェックして来ていただいた方は従来より少なかったです。頒布する作品が違うのですから単純な比較はできませんが、それでもわかる頒布枚数の減少がありました。

サークルスペースに来て頂いてダウンロードカードをお求めの方には、「ダウンロード盤ですがよろしいですか?」と確認を取りましたが95%以上は問題ないという方ばかりでした。しかし、数%はダウンロードだから遠慮しておきますという方がいらっしゃったのは事実です。数%だったのはウェブサイトの告知、Twitter での告知、お品書きにもダウンロードカードですという注意書きを書いていたのでダウンロード盤が嫌な人はそもそもチェックもしてもらえなかったのではないかと思います。

また conca のダウンロードカードで配信するファイルは wave にするか MP3 にするか悩みました。どうせなら高音質なファイルが欲しいのではないかと思いますが、スマートフォンでは wave は聴けません。ダウンロードなのに圧縮した MP3 を配信するのも何か腑に落ちません。結局の所今回は wave で配信しました。

おわりに

同人音楽即売会でダウンロードカードは時代を先取りしすぎたかなという感じです。でもスペースに来ていただいた一般参加者の方に聞きましたが、ダウンロードカード頒布をしているサークルは徐々に増えているそうです。しかし、CD 頒布が全てダウンロードカードに置き換わるか?と問われれば否だと思います。音楽を買うという発想の人と、ジャケット、ブックレット、CD、全て含めた物として買うという人の2通りがあると思いますが、同人音楽界隈では後者の方が多いのではないでしょうか。ダウンロードで買えば良いという人はそもそも即売会には来ないと思います。

conca を含めたダウンロードカード頒布は、買った人がもっと簡単にダウンロードして聴けるようにする事が課題だと思います。CD で音楽を聴く簡単さには及ばなくても、もう少し簡単にならない事にはダウンロードカードがドカンと広まる事は難しいと思います。

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